5本指くつした座談会

左から、森一章さん(技術開発部開発課)、遠藤裕治さん(技術開発部開発課)、土屋聡子さん(チェーンストア部・技術開発部担当執行役員)、青山泰代さん(技術開発部品質管理課)

ナイガイのベテランスタッフに集まってもらい、「5本指くつした」に関する座談会を開催。知っているようで知らなかった5本指くつしたの話、ぜひご堪能あれ!

----------------
それぞれの5本指くつしたに関するエピソードや、好きな5本指くつしたなど、自己紹介をかねて一言お願いします

遠藤:入社以来、ずっと商品開発・商品企画などを担当してきました。5本指くつしたも色々と作ってきましたが、最近では、特許を取得した「親指セパレート(※1)」の開発に携わりました。5本指くつしたって良いというのはわかっていても、忙しい朝に履きづらいなという不満もあり、より簡単に足指にフィットできるものができればと思って作りました。あと、個人的に、夏の時期には和紙でできたものが好きですね。さらっとしていて気持ちいい。

※1親指セパレート:親指と人差し指の間にスペースを作り、さらには指1本1本が立体的になったナイガイ独自の5本指くつしたの編み方。特許第6677690号。

青山:私は、以前お客様相談室で直接お客様の声を伺っていたのですが、5本指くつしたが好きな方は5本指くつしたしか履かないというという印象が強いですね。私自身は、5本指くつしたを履いてみたりもしたのですが、履きづらくて挫折した過去があります。遠藤さんが開発した「親指セパレート」も気になるのでチャレンジしてみたいと思っています。

土屋:以前くつしたと私。のインタビューで、一番好きなくつしたということでランニング用の5本指くつしたを紹介したように、私は普段から愛用しています!ランニングが趣味なのですが、走る時はこれに限ると思っています。滑り止めがついているので靴の中でずれにくいし、指とサポートの間部分がメッシュになっていてとても柔らかくて伸びるので履きやすいです。本当に大好きな1足。先ほど遠藤さんがお話していた「親指セパレート」のものも履きやすいので使っていますよ。ゴルフとかランニングの時って、大地を掴むように、体幹を保つ立ち方などが重要なのでそういう時に5本指くつしたを使うと、速く走れたり、ゴルフのスコアも良くなるような気がします!

森:これまで色々な5本指くつしたの開発に携わってきましたが、遠藤さんがおっしゃっていた和紙の5本指くつしたの企画のサポートも経験しました。その当時、和紙の糸は太くて硬くて工場さんからは扱いにくくて編みにくい!なんて言われてしまって、糸自体をもっと柔らかく細くできないか?と試行錯誤していたことを思い出しました。
婦人の企画を担当していた時は、当時シルクのものがとても売れていて、二重編み構造にしたものや重ね履きの商品、指先が空いている5本指くつしたなども作ってきました。
自身としては、夏に汗対策として足先部分だけのハーフのものを重ねて履いたり、冬は寒さ対策としてシルクや綿素材のものを重ねて履いたりしています。
そんなこんなで5本指くつしたとは、15〜20年弱のお友達ですね(笑)。
ありがとうございます!くつしたメーカーのベテランスタッフの皆様でも履くのが面倒だと感じたり、作ることも少し難しいと感じているということが伝わってきました(笑)。でも、作る側だけではなく、ユーザー目線の思いも聞けてとても興味深いです。もし、プライベートでお友達に5本指くつしたをおすすめするならどうやって伝えますか?5本指くつしたのメリットはなんでしょうか?

土屋:汗をかく時期に履くと、指の間がベタベタしない、さらっとしている。足がクサイのが悩みという人にはハーフのものを履いて欲しい。さっき森さんが言ったみたいにね。正直、消臭素材の靴下を履くより効果が高いと思いますよ。ぜひ足クサさんにはオススメしたい!

森:純粋に指が開きやすいというのがメリットかな。それこそ生まれた時、赤ちゃんの足指は、1本1本がくっついていない。でも、靴やスポーツ環境など様々な理由があって成長の過程で指がくっついてしまう。意識的に開いたり動かすことをすべきという点で、5本指くつしたは良いです。
あと土屋さんがおっしゃったように、指の間に生地が入るので汗を吸い取ってくれることで雑菌の繁殖が抑えられるので、ニオイ対策にも効果的。

青山:友達にどう?って聞かれたら…自分の体験から、5本指くつしたを履くとちょっと指股が痛くなるんですよね。履き方が悪いのかなぁ?

土屋:指の長さが短いものを履いちゃったとか?それでぎゅーっと引っ張りすぎてしまったとかかな?

青山:うーん…

土屋:私はそういう経験がないからわからないけど、でも足に合っていないんだろうね、サイズか形が。

青山:なるほど、それはあり得ますね。

遠藤:それと、指の股の部分は生地の構造で言うと穴が開くような状態になっているので、編み目を重ねてその穴を閉じていて、なのでどうしても指股部分に目の重なりがでてきちゃうんですね。

土屋:そう、ちょこっとなんだけど伸びない組織になっているから突っ張るようなイメージ。

遠藤:うん、そう。張る感じです。

土屋: それと編み機によっては指部分が元々ねじれた状態で編まれちゃう。ホールガーメント®️とか横編み機(※2)で編んだものはそんなことないんだけど、ねじれたものはなんとなく履き心地も突っ張る感じ。編んだ機械の種類によっても履き心地が違うかな、と思います。

※2:一般的なくつしたは専用の筒状になった丸い編み機で作られている。その編み機で5本指くつしたを編むと指股部分をねじった突起状の指をつくる形になるが、セーターを編む横編み機では、指一本一本を別々に編むことができ綺麗に仕上がるしかし編み立てるのに時間がかかってしまうので、ある意味横編み機で作られた5本指くつしたは贅沢な作りとなっている。なお、ホールガーメント®️は株式会社島精機製作所の登録商標(登録番号第4502852号)。


青山:へー!ということは、5本指くつしただけでもいくつか種類を試してみるのがいいんですね。

土屋:そうだね!複数試して自分の足にしっくりくるモノに出会えれば!なので、私も色々履くけれど、一番合うのは新作より従来型のもので。指の長さとか、とにかく私の足指に合っているんだよね。だからこれはもう絶対廃盤にしないで欲しい!

森:フフフ。
なるほど。1回履いてちょっと合わないなぁ、ではなく、色々履いてみよう!というのが5本指くつしたと仲良くなるポイントですね!

土屋:できれば最初は高単価のものを試すといいかと。なぜかというと、安価なものだと、軍手を編む機械で指の部分だけを編んでくつしたの編み機で編んだものと目をつなげてくっつけて作っているものもあったりして、やっぱりそういうのはあまり履き心地が良くない。デザインは可愛いかったりするんだけど、やっぱり5本指くつしたは指部分が立体的になっていたりするようなものの方が圧倒的に履き心地が良い。となると、編み機も編み方もきちんとこだわっている方がいいわけでそうなるとどうしても安くは売れない。そういう意味ではぜひファースト5本指はナイガイのものを(笑)!

遠藤:メリットというかポイントで言うならば、シチュエーションに合わせたものを使うとより良いパフォーマンスが得られます。素足に近い感覚に持っていってくれるのが5本指くつしたなので、スポーツをする時にはきちんと滑り止めのついたモノを、暑い時・寒い時にはこういう素材、って用途に合わせた選択をして欲しいですね。

森:あと足本来の機能を活かせるのが5本指くつしたの役割だと思う。現代のライフスタイルでは、長時間靴を履き、窮屈な体勢をずっと取っていたりする。本来あるべき立ち方、歩き方が強制的に変わってしまう。だからこそ足指をしっかりと動かして健康な足を保つことで元々持っている人間の機能をキープできると思います。
人間の機能!!5本指くつしたって本当に奥が深いですね…。
では作る側の視点をお聞きしたいのですが、どんなことにこだわって5本指くつしたを作っていますか?


遠藤:これまでは、どうしても足指部分が平面的な作りになってしまっていたんですけど、最近の編み機は立体的な表現ができるようになってきました。つまり、より足の形に近づいていったと言えます。なので、いかに足の形を編みで再現できるか、みたいなところが課題だったりするのではないかなと。

森:指の大きさや位置も細かくこだわってます。親指から順番に、長いのからだんだん短く。小指なんかは付け根を他の指より下に配置しています。下げないと指が抜けちゃうんだよね。ハイヒールを習慣的に履いている女性など、小指が曲がってしまったという方は履くのも大変ですよね。そういう方のためにも指位置というのもきちんと検証しなくちゃ、という思いもありますが、なかなかすべての人の足にフィットするものを作るのは非常に難しいですね。足の長さ・幅はたくさんデータがありますが、指の長さや甲の高さはまだ十分なデータが無い。でも、「親指セパレート」みたいに、指の間に着目して作ってみたり、日々より良いものが生み出せるよう僕らは開発を進めていきたいなと思っています。

遠藤:うん、素材も開発されてきて、編み方もですけど、組み合わせを考えることでまだまだ成長できる可能性があると思います。

森:あ、あと、くつしたは綿100%が良いっていうお客様もいるよね。化学繊維が苦手という方だと思うけど。でも綿100%はそもそも伸縮性が低いのでフィット感があまり良くない。5本指くつしたはフィット感が命の商品だから綿だけで表現するのが難しい。でも綿なら汗をたくさん吸ってくれる素材なので…うまく履き心地と綿素材の良さが共存できる1足を開発してみたいなと思っています。
そう言えば、ユニバーサルデザインの5本指くつしたの開発でミライロさん(※3)とのお取り組みをされているという噂もお聞きしたのですが、こちらはすでにお身体にハンデを持たれている方に試着してもらったりされたのですか?

※3 障害を価値に変える『バリアバリュー』をコンセプトにユニバーサルデザインの提案を行っている株式会社ミライロさんにご協力いただき、くつしたのユニバーサルデザインを模索している。身体に障害を持っている方に試着してもらって意見交換をする試着会などを行い、誰でも履き心地が良い「みんなのくつした」でコラボレーションアイテムを製品化。詳しくはこちら

土屋:はい、これまでに5本指くつしたの試着会も2回ほど行いました!身体に障害がある方ですと自由に手足を動かすことができないから、丈を極力短くして少しでも履きやすくしようということになり、カバータイプのもので作っています。特に下肢障害のある方は足がむくみやすかったりするので、ゴム糸が使われている履き口部分を柔らかくして。足が動かない方でも履きやすいね、と言っていただけたので、商品化できたら高齢者の方でも履きやすい5本指くつしたになるだろうと思っています。エビデンスは取れていないけれど、履いた時にあたたかいという声を聞くこともできたので、早く商品化できるように頑張ります!

森:やっぱり5本指くつしたは指部分が大事なので、足に障害がある方に取ってはハードルが高いアイテムだなと痛感したというのが本音です。
でも、試着会の時はむくんでいらっしゃって全く足がくつしたに入らなかった方が、その後自発的に頑張って歩いてむくみを軽減して、あの時履けなかったくつしたが履けたよ!というご報告をいただいたこともありました。100点のものづくりだけではなく、50点のものでも作ってみながら試着会に来てくださる方と共に作り上げていく、という思いで色んな声を聞きながら作っていければとは思いましたね。

そこから新しい5本指くつしたの形も生まれてきそうですね。
もっと詳しく聞きたいところではありますが…本日はここで締めさせていただきます!最後に一言ずつお願いします!


森:悩みや課題をこれからも共有して、もっともっと深く掘り下げていきたいなと感じました!
またこういう機会があったら、次は工場の方の本音なんかも聞いてみたいです。

土屋:数十年前まで5本指くつしたってほんと軍足、作業員が履くものという位置づけだったと思います。でも、その5本指くつしたをここまで一般的に広める機会を作ったのはナイガイだったんじゃないかなと。だからこそ、私たちの5本指くつしたは逸品だと思うのでもっとこれが広がっていければいいなと思います!

青山:5本指くつしたについてある程度理解しているつもりでしたが、今日こうやって改めて皆さんの話を聞いて「全然知らないことってこんなにあったんだ!」と感じてとても面白かったです!ぜひもっと多くの人にナイガイの5本指くつしたを履いてもらいたいです!

遠藤:5本指くつしたで日常のストレスを軽減できればと思っているので、そういう意味では履きにくいというのが課題なのかなと。究極は指入れを補助しなくても一発で履ける、素足感覚で履けるような5本指ができたらなと思っています!

----------------

★ナイガイの5本指くつした特設ページはこちら

※記載内容は記事掲載当時の情報となります。

≪ 「くつしたと私。」トップへ