くつしたにたくさんの思いを込めて (天間久美子さん)

「身に着けるものを作りたいんです。」
純粋なその気持ちは、子供の頃に母親が作ってくれた人形の洋服と重ね合わせて生まれたものなのかもしれない。外遊びよりも、人形遊びやお絵かきにのめり込んでいった少女は、今ではくつしたに命を吹き込むデザイナーとして活躍している。

株式会社ナイガイ 企画開発部 企画室
天間久美子さん


美大へ進学した時はデザイン科だったが在学中に服飾関係の仕事につきたいと思い、小さなアトリエを営む会社で企画の経験を積んだ。衣装やビンテージアイテムを扱い、1点ものを作る現場では、デザイン・染色・プリント・縫製など、様々な工程を手がけた。
最終的にはバッグの企画を担当し、その後にくつしたのデザイナーとしてナイガイへ入社をした。
「次のステップとして、バッグのデザイナーではなく、くつしたを選んだのは、やっぱり“身に着ける”ということにこだわったから。ファッションのスタイリングとしてバッグももちろん大事なアイテムだけれど、足を包むちいさなくつしたに思いを詰めて作り上げるということをやりたいと思ったんです。」

しかし、前の職場の経験もここで生かし、求評展へ出展するためのリメイクソックスというものも作ったそう。売れ残ったくつしたに顔料プリントを施して、まったく異なるデザインとして生まれ変わらせるというもの。次々と新しいものを作るのではなく、今あるものに新しい価値を加えていく、というアイディアは、ものづくりそのものの価値観を改めて考えさせられる。

「今後、市場にもそういうものが出てくるといいなぁ、なんて思います。デザインだけでなく、“考え方”で選ばれると嬉しいですよね。」
話を聞けば聞くほど、履き心地の良いくつしたやデザイン性の高いくつした、ということだけではなく、自分を取り巻く環境を俯瞰しながら作っているというのが伝わってくる。

実際に天間さんが企画を手掛けたくつしたは、“語れるもの”が多い気がする。この2020年春夏のビジュアルでも起用したくつしたも、彼女が携わったものだ。いずれも履き心地が良く、数年に渡り売れ続けている。
ガーゼ編み(写真右)の履き口は、元々他の商品で使われていた手法です。この気持ち良いシルク紬糸に、この快適な履き口だともっといいよね、とMDと会話しながら作りました。」
※こちらのくつしたは、以前の記事でもご紹介

薄手の二重編み(写真左)に関しても、季節問わずに重宝する1足だ。
「そうそう、これもMDと一緒にこの薄いスベスベのシルクで足を纏ったら気持ちいいな、と話して作ってみたものです。室内だけでなく日常使いのできる耐久性を持たせて、いつでも使える1足にしました。」

彼女が商品を説明する際に、必ず、共に企画を担当した人の名前が出てくる。チームで作ることを大事にしているんですね、と尋ねてみると、彼女の仕事に対するスタンスを教えてくれた。

「人と仕事をする上で、色々な考え方があることを忘れないようにしています。相談しながら一緒にくつした作りをしているつもりですし、その中で思い描いていたものができた時、仕事が楽しいな、と思います。
昔は狭い視野の中でやっていましたが、今は人と関わったことで影響されてできあがったものは面白いな、と思っています。」

ちいさなくつした1足1足にたくさんの思いを込めて、愛され続けるのに相応しいくつしたが今後も天間さんの手によって生み出されていくのをこれからも楽しみにしたい。

株式会社ナイガイ 企画開発部 企画室
天間久美子さん

現在はライセンスブランドのデザインを担当。
海外出張も多く、この春の自粛期間中もオンラインを活用して、英会話を特訓したそう。
実はラーメンが大好きで、人気店へ行くのが密かな楽しみなのだとか。

天間さんが手がけた1足
薄手二重編みくつした(NAIGAI COMFORT)

レディス:品番3022-322 ¥1,500(税抜)

※商品情報は、記事掲載当時の情報となります。

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