「ファシリテーター」とは、何をしてくれる人なのか？ 会議やプロジェクトの進行役とは言うものの、果たしてどんなゴールへ導いてくれるのか、初めは全く想像ができなかった。

ナイガイが創業100年目を目前にした2017年。ある広告代理店にナイガイのリブランドを依頼した。企業としての100年の歴史を振り返り、次の時代へつなげるために、これまで深堀りをしてこなかった「そもそも」なことを、ワークショップを通じて見つけ出す。そのファシリテーションを手がけたのが赤松さんだった。
赤松さんが舵をとる船に乗りこみ行き着くべきところを目指したわけであるが、強引にどこか見知らぬ島へ連れて行かれるのではなく、全員で出し合ったアイディアを基に、進むべき航路を上手に見つけ出してくれたのだ。その鮮やかな手捌きを見て、なるほど、これがファシリテーションか、と感銘を受けたことを覚えている。


株式会社そもそも　ファシリテーター
赤松範麿さん


学生時代は物理を学んでいたそう。覚えることが少なく応用が多いので、「理屈」と「イメージ」が繋がってわかりやすいから好きだったのだとか。社会に出る時は、コンピューター関係の仕事をしておけば潰しがきくだろうと思いシステムエンジニアになった。１つの職業をずっと続けられる気がしなかったし、実際にそうでした、と笑って教えてくれた。

情報システムを構築する中で、これは何の役に立つのか？と疑問を抱くようになった。手段としての情報システムよりも、なぜ情報システムをつくるのかと言う目的を見つけるところから関わりたいと考え、コンサルティング会社へ転職した。
コンサルタントとしてキャリアを重ねていくが、あることに気がついたと言う。

「コンサルタントは、経験から作られた、自分たちの汎用的な正解を持っていて、クライアントのやっていることがその正解から外れていると、『そこがダメなんです！』と短所の指摘をすることがあります。でも、企業には汎用的な答えはなく、それぞれの独自の正解があるはず。それこそが、利益の源泉となるものです。そこに関わりたいと思って、広告代理店に移りました。」

「できていないこと」を指摘して、自分たちの正解に合わせようとするのではなく、それぞれの企業の良いところを引き出したい。だから、コンサルタントではなく、「ファシリテーター」と名乗るようになった。そんな中、ナイガイからリブランドのコンペ参加依頼があった。まずは現状を知るためのオリエンテーションの場で初めてナイガイに触れた。

「みなさんとお会いした時には、斜に構えたところがなく、気さくな印象でした。まじめな社風を感じたので、私たちのようにクライアントによって都度やり方をカスタマイズするスタイルよりも、きっちりとしたフレームを持ったコンサル企業の方が選ばれるのではないかなと思っていました。」

しかし結果は赤松さんが属するチームにリブランディングをお願いすることになり、そこから根本、つまり「そもそも」を突き詰めるためのワークショップが始まったのだ。

改めてそのワークショップを振り返り、「くつした」と「ナイガイ」について、語ってもらった。

また、赤松さんにとってナイガイのくつしたの履き心地は衝撃的だったそう。ナイガイに携わる前は、特にこだわりがなく、くつしたを買うのはいつも何かのついでだった。しかし、これまでなかった履き心地に、くつしたの概念が変わったと言う。
一番愛用しているのは、ナイガイの“ゴムなし”のくつした。履き口にゴム糸を使わずに編み立てているので、締め付けが少なくリピーターも多い１足だ。

「以前は履き口部分がかゆくなっても当たり前と思っていましたが、ナイガイのゴムなしを履いて、そこから開放されたことに感動しました。履いている時は全く締め付けがないのにずれ落ちてこない。しかも脱ぎやすい。手を使わずに片足で押さえてスルッと脱げるのも気に入っています（笑)」

インタビューの最後に、今後のナイガイに期待することを聞いてみた。

「ブランドのタグライン『素足以上に足どり軽く』は、『素足の心地良さを、くつしたは超えられるのか』という、挑戦へ向かう気持ちも込められています。これは、ご自身たちに、ものづくりの高い基準を課すもので、メーカーとしての強い覚悟を感じました。ナイガイ様が極めた技術の先にどんな製品ができるのか、１ファンとしても期待して待っています。」

赤松さんの期待に応えられるよう、私たちは101年目を踏み出そうとしている。