彼女だけが創り出せる世界 (植松しんこさん)

SNSのめざましい発展によって多くのクリエイティブに触れることが私たちの日常となったが、それでも本物の「世界観」というものはこういうものなのだ、と感じる瞬間があった。
寝ている猫や踊る女の子、友達の家の庭に咲いていた花。描かれているもの一つ一つが紛れもなく、彼女の描く世界の一部なのだ。暖かく優しい、唯一無二の世界。

春に開催予定だった個展が延期され、夏の終わりに改めて開くことになった。せっかくであれば彼女の絵に囲まれながら話を聞きたいと思い、ギャラリーを訪れた日のこと。

イラストレーター 植松しんこさん

ナイガイの100周年という機会で、植松さんにイラストを描いてもらった。彼女の描く景色の中に現れたくつした。「ループ付きくつした(2020Spring&Summer)」と「ハマグリパイルソックス(2020Fall&Winter)」を組み込んでもらったのだ。

春夏のイラストの背景は、お庭なのか、少女の部屋なのか。様々な植物が生い茂る中、デスクの前でくつしたを履く姿の女の子。不思議な空間なのに、違和感なくくつしたが馴染んでいる。
「くつしたを履いた時に、“ふわ!気持ちいい”と感じるようなイメージを盛り込みました」

秋冬は、ナイガイの歴史を物語るハマグリパイルソックスの写真をコラージュしてもらった。写真が引き立つように人物は描かず、どこか華やかなリビングルームを彷彿とさせる作品となった。
実は植松さん、このくつしたを愛用してくれている。

「ハマグリパイルソックスは、色んな意味でとてもあたたかさを感じます。ほっこりしていて履くと本当に優しくて。クーラーで足元が冷えたりするので夏でも履いています。」
“植松さんの世界”が生まれたのは、子供の頃の経験や記憶からだと思われる。自宅の側にあった林の中で秘密基地を作って遊んだりと、とにかく自然に触れる機会が多くあった。片や、家の中では漫画を読むことが大好きで、将来は漫画家になる!とひたすら自分でも漫画を描き続けていたのだそう。

大人になってからインテリアの仕事をしながら、趣味で制作していたコラージュ作品をブログに載せていたことをきっかけに、雑貨屋でポストカードを置いてもらうようになったのが大きな転機。他の人の作品を組み合わせていくコラージュでは著作権の問題が出てきてしまうということで、また自分で描くことに向き合うようになっていった。

今では多くの女性向けファッション誌などで、頻繁に植松さんのイラストを見かける。そしてそれは一目で彼女の作品だ、とわかるのだから、やはり独特の描き方というものがあるのだろう。
「くつしたって一期一会ですよね。可愛い!と思って買ってから眺めるだけで履けずにいることもあります。」

実はルーズソックス世代だとか、意外なくつした話も聞かせてくれた。
その中でふと彼女の描く少女はどんなくつしたを履いているのかな、と頭をよぎった時、植松さんが「ウールのくつしたはよく選びます」と。
そうだ、きっとあの絵の少女もウールの入ったあたたかいくつしたを履いているに違いない、なんて、妄想の世界に浸ってしまった。

イラストレーター
植松しんこさん

神奈川県生まれ。東京在住。
インテリアコーディネーター、設計を経て2010年よりフリーのイラストレーターとして活動を開始。
軽い水彩や線画からオイルパステルまで幅広く使用し描く作品は、カラフルでありながら、色同士が喧嘩をすることなく、どことなく落ち着きがあり、かわいらしさと大人の雰囲気の両方を漂わせるものが多い。女性らしい感性やセンスがあり、女性向けのクライアントにはリピートも多数。雑誌、広告、雑貨などで幅広く活躍中。

植松さんお気に入りの1足
ハマグリパイルソックス (NAIGAI TRADITIONAL)

レディス:品番 3001-201 ¥1,000(税抜)

※掲載内容は、すべて記事掲載当時の情報となります。

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