丁寧に暮らす。くつしたも一緒に(松延友記さん)

この人はどんな暮らしをしているんだろう。学校で知り合った友人、仕事を通じて親しくなった人たち。今までにたくさんの人と出会ってきたけれど、自宅訪問でもしない限り相手がどんな暮らしをしていくのかなんてなかなか知れるものではない。
初めてお会いした時から、肩書きのせいではなく本当に彼は丁寧な暮らしをしている、という確信からインタビューを申し込んだ。

株式会社藤栄 フレディ レック・ウォッシュサロン プロデューサー
松延友記さん


フレディ レック・ウォッシュサロンは東京都内にある、いわゆる「コインランドリー」だ。しかし、よくあるドデカい洗濯機が置かれているだけの味気ないコインランドリーとは違う。洗濯の代行やクリーニングはもちろん、併設されたカフェで洗濯が終わるのを待つこともできるし、オリジナルの洗剤やグッズも買えるなど、洗濯を通じて新しいライフスタイルの提案をしているサロンなのである。

そこのプロデューサーである松延さん。もちろん自身もクリーニング師・ジュニア洗濯ソムリエの資格を保有し、彼の発信によってサロンの魅力を多く伝えてきた。過去にも百貨店の靴下売り場で「靴下の洗濯の仕方」についてレクチャーいただいたこともある。
松延さんから聞いたくつしたの話。子供の頃は、当たり前のように母親がくつしたの破けた部分を縫ってくれていた、という何気ない思い出。
「周りに見つかるとそれこそいじられる対象になっちゃうようなことですけど、僕が小学生・中学生だった頃はそれが普通だったと思います。大学生頃になって量販店などで自分で買うようになって・・・気がつけばくつしたも使い捨てるものになってしまいましたけど。」

しかし「穴の縫われたくつした」も、例えば縫い糸をカラフルにしてみたり、あえてワンポイントになるようにしてみたらどうかな、というアイディアを自分のSNSに掲載をしてみたところ周りからも良い反響があったそう。

「お茶碗の金継ぎみたいに、くつしたの破れも楽しめるといいな、なんて思ってます。」
当たり前のように今では穴の開いたくつしたは捨てられていくけれど、物を大事にしたいという価値観で見直せるようになるのかもしれない。その気づきを松延さんに与えてくれたのは、親の存在だった。

「普通の家庭でしたけど、親が良いものを長く使うというライフスタイルだったのでその影響を大きく受けていますね。子供の頃は洋服やくつしたも、品質を重視して百貨店で買ってもらっていたと思います。家にあった家具も、大人になってから良いものだったんだなと気づくことがあったりして。コーヒーメーカーは親から引き継いで使っていますし、家の中のものについては親に相談することもたくさんあります。」

ものに溢れた現代だからこそ、品質にこだわって大切に使うという考え方は理想だ。安いものだから買い換えればいい、汚れてきたから捨ててしまえばいい、そんな価値観はもう過去のものになりつつある。松延さんの座右の銘は「less and more」。シンプルでありながら豊かな生活を追い求めている。その考え方はまさに親から受け継いだものなのだろう。
彼のいるサロンでは、圧倒的にくつしたの忘れ物が多いそう。どこのコインランドリーでもよくあることなのだと思うが、洗濯機の中で隠れてしまった黒やグレーのくつしたは、つい忘れ去られてしまうのだ。

「でもね、取りにくる人もたくさんいらっしゃいますよ!・・・なんとなく、品質の良さそうなものの方が持ち主も元に帰ることが多いような気もしますけど。」
きっと、取りに戻ってくる人は松延さんのように、丁寧な暮らしが実現できている人なのだろう。

株式会社藤栄 フレディ レック・ウォッシュサロン プロデューサー
松延友記さん

大阪府生まれ。株式会社藤栄に入社後、大阪で大手カタログ通販会社の企画営業を担当し、アジアを中心に商品開発と営業を行う。その後、東京にて2010年にフレディ レック・ ウォッシュサロンのランドリーグッズの企画を担当。 2017年、フレディ レック・ウォッシュサロン トーキョーをプロデュースする。 クリーニング師・ジュニア洗濯ソムリエの資格を活かし、シミ取りやアイロン 掛けのワークショップやウェブメディアでのレクチャーなど幅広く活動。 父親の育児や家事参加を促す活動もライフワークで行う。
2020年7月21日からは、新たなポジションでインテリアの事業展開にチャレンジするそう。


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