じっくりと時間をかけて、良いくつしたと良い職人を(旭ソックス株式会社)

昔は大和木綿の産地として栄えていた広陵町(奈良県)。くつしたの生産量が日本一であり、工場が多く存在している。その中でも、品質の高さを追い求めている工場へ訪ねてみた。

旭ソックス株式会社/広陵町(奈良県)

1951年、当時3名の従業員で始まった「旭ソックス株式会社」。子どもやベビー向けのくつしたづくりから始まり、その後レディス、メンズと幅を広げてきた。今では100台ほどの編み機を構え、全国展開をする多くのメーカーと手を組み、他社には真似ができないようなくつした作りをしている。

旭ソックスが大切にしていることは、高品質のものづくりと、人、だという。働いている人たちの表情やその熱心な姿から放たれるオーラから、なるほど、と思わせられる空気が工場の中を漂っていた。実際にくつした作りにおいて、そのクオリティの高さは他社からも定評があり、これまで長年に渡り、取引先からも多く表彰されてきている。
高品質なくつしたを作るということは、編み機を使いこなし、複雑なデザインであっても履き心地に妥協しないということだ。
今では編み機も自動的に仕上げられるような機械となっているが、機械そのものの調整は人の手で行われており、扱う人によって出来上がるくつしたも変わってくるのだという。
そのこだわりを感じさせられる編み機を見つけた。この機械は、日本国内でも2社にしか所有していない、珍しい編み機だそうだ。その2社のうち、より多くのくつしたを作り上げているのが旭ソックスである。
たくさんの糸が頭上にぐるりと並んでいて、一般的な編み機よりもひと回り大きく見える。
いかにも「複雑な編み地はまかせろ!」という声が聞こえてきそうな出で立ちに、少し圧倒されてしまった。
この編み機で仕上げると、細かなボーダーや複雑なデザインであっても綺麗に編み立てられ、肌に当たる糸も最低限で済むのだ。
(くつしたの柄が複雑になればなるほど内側に糸が飛び出してくるのはご想像いただけるだろうか?)

くつしたの履き心地を追求していくのであれば、どのように肌に触れるのかということを考えていかなくてならない。まさにデザイン性を求めつつ、履き心地の良さも共存できる1足を編み立てるにはうってつけの機械である。
一般的なアーガイル柄のくつしたも糸の飛び出し部分があったりするのだが、この機械で編まれたものは中まですっきり美しいのだ。

また、この難しいくつした作りを支えているのは機械の性能だけではなく、熟練の腕を持ったスタッフたちがいるからこそであるという。高品質のものづくりを安定的に続けられる要因は、職人としてそれぞれが数多くの知識やスキルをコツコツと学び続けてくれるから提供できているのだ。


質の高さを求め丁寧にくつしたを作るためには、効率が悪く生産性が低いやり方しか無い。人もある日突然成長をとげるものではない。
信念を曲げずにどちらも時間をかけて積み上げていくことで、良いくつした作りが叶うのだ。まさに、くつしたも人もじっくりと作り上げる、忍耐の極みを感じる環境だ。

旭ソックス株式会社

奈良県北葛城郡広陵町大字笠203

※掲載内容は、すべて記事掲載当時の情報となります。

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